住み慣れた部屋に別れを告げる。
来月から新生活が始まる。
大学を卒業して一人暮らしを始める。
住み慣れた町をもう一度歩く。
すこし暖かくなってきたから、日差しが気持ちいい。
通いなれた駅までの道
登校時、毎朝チャイムを鳴らした友人の家
路地裏の猫
子供の頃、世界の全てだった児童公園
遅くまで友達と話した神社。
いつもの風景を 丁寧にゆっくりと歩き
さようならを告げていく。
焼きたての匂いが大好きな
商店街のパン屋さん。
ここで夕食のために、バゲットを買う。
去年の末から
母に少しずつ教わっているレシピ。
パン好きな私のために、一人暮らしをしても
(母親がパン好きのせいで、私はパンを使った料理が大好きだ。)
大丈夫な様にと、夕飯は二人で料理をしている。
大学に入ってから、学業・友人関係・サークル・アルバイト、そして彼氏と
外との繋がりが増えた分だけ、
家族とのコミュニケーションが減ったような気がする。
だから、母とこうやって料理する機会を得て
今さらながら、家族と離れて暮らしていくんだ
と言う事を、はっきりと感じられるようになった。
「あなたが好きなフランスパンは、朝食、昼食、おやつ、夕食と
料理の仕方によって、何とでもアレンジできるからとにかくいつでも用意しておきなさい。
フルタイム、パンタイムなんてね。」
母親の冗談とも教訓とも取れる言葉を聞いて、
笑いながら、心の中で
「今までありがとう」とつぶやいた。